もう迷わない!接着剤の選び方 2022. 07. 14
今やタイル張りだけでなく、建築仕上げ材の張り付け材料として欠かせない接着剤。
普段、仕上げ表に何気なく「接着剤張り」と表記されることはありませんか?
接着剤といっても、 エポキシ、アクリルエマルジョン系・・・・等 、用途に応じて様々な特長を持った接着剤があり、
LIXILグループだけでも、20種類近くの接着剤が発売されています。
でも、たくさんの種類があると何を使っていいか迷ってしまいますよね。
今回の記事では、そんな接着剤選びに迷わないように、
みなさまのお仕事やご家庭でも、覚えておくと便利な『接着剤の基本』をご紹介いたします!
接着剤の基本ポイントは3つ!
結論から言うと、接着剤の基本は「何を貼るか」+「何に貼るか」+「どこに貼るか」の組み合わせです。

日常生活では、硬い材料には硬く固まるようにすること、柔らかなものには柔らかくくっつけることが、接着剤選びの基本的な考え方です。
建築場面では、その後の利用環境やデザイン性、材料の重量なども考慮して接着剤を選ぶ必要があります。
接着剤だけに、少しかたい話になりますが・・・・
JISにおいて、内装用の接着剤は「用途」と「成分」によって分類されています。
「用途」による3つの分類
タイプⅠ~Ⅲの3つに分類され、下記のように定義づけされています。
- タイプⅠ:湿っている下地に張り付け後、長期にわたって水や温水の影響を受ける箇所に用いるもの
- タイプⅡ:ほぼ乾燥している下地に張り付け後、間欠的に水や温水の影響を受ける箇所に用いるもの
- タイプⅢ:ほぼ乾燥している下地に張り付け後、水や温水の影響を受けない箇所に用いるもの
こうして見てみると、接着剤は「どの程度、水や温水の影響を受けるか」がポイントになっていることが分かりますね。
「成分」による4つの分類
- 1:合成樹脂エマルション系
アクリルエマルションを主成分とし、その他の樹脂、添加剤、充填剤などを配合したもの(硬化が早いものが多く、耐久性に優れ、使用しやすい) - 2:エポキシ樹脂系
エポキシ樹脂を主成分とし、その他の樹脂、添加剤、充填剤などを配合したもの(高強度で耐水性や耐熱性、耐薬品性に優れる) - 3:ウレタン樹脂系
ウレタン樹脂を主成分としたもの(柔軟性に優れ、シール材としても使用される) - 4:変性シリコーン樹脂系
変性シリコーン樹脂を主成分としたもの(柔軟性・弾力性に優れる)
まずは、接着剤の分類について、簡単にご説明しました。
さて、ここからは、先ほど出てきた接着剤の基本3ポイント( 「何を貼るか」「何に貼るか」「どこに貼るか」 )についてです。
私たちが取り扱っている、タイル・ガラス・ストーンモザイク等にも照らし合わせながら、各ポイントを詳しくご紹介していきますね。
◆POINT1「何を貼るか」
- 内装タイル(300mm角以下)
1枚あたりの重量が軽いので、壁に施工しても接着剤が固まる前に垂れてくる心配が少ないです。
- 内装タイル(300mmを超え、600mm角以下)
1枚あたりの重量が重いので、すぐに固まるタイプの接着剤がおすすめです。
- 外装タイル
タイルサイズや裏足形状によって、接着剤の塗布方法に違いはありますが、下地の動きに追従しやすい弾性接着剤で施工します。
- 石材
接着剤メーカーの仕様に沿って石材用の接着剤を選定することが基本となります。
- ガラスモザイク
洗面・キッチン等、水廻りでの利用が多いガラスモザイクは、エポキシ・弾性接着剤いずれも使用が可能です。
◆POINT2「何に貼るか」
- モルタル下地
モルタル下地に対しては、アクリルエマルション系からエポキシ系まで多くの接着剤が使用できます。
ただし、モルタル下地は外装から内装・壁・床・水掛かりの有無等、様々な使用場面が想定されるので、
水掛かりの有無に注意して適切な接着剤を選定しましょう。
- 合板他、ボード系
ボード下地は、浴室等の水掛かりが想定される場面では使用されることはありません。
そのため、内装壁・内装床を含め、耐水性を求められる事はないので、アクリル系からエポキシ系まで多くの接着剤が使用可能です。
- 押出成型セメント板・ALCパネル
外壁での使用場面が中心となりますので、水掛かり・パネルの反りや挙動を考慮して、耐水性と追従性の高い、弾性接着剤を使用します。
- 鉄扉
外装の鉄扉の場合は、「サビの発生」「鉄とタイルとの熱膨張差」「鉄板と張り付け材料の接着」などの問題があります。
鉄板にワイヤーメッシュを溶接し、下地を作製する方法や、ボードを取り付けた後、外装用弾性接着剤でタイル張りする方法など、
特殊な施工が必要なため、個別でのご相談が必要です。
◆POINT3「どこに貼るか」
- 日差しや雨がかかる屋外の壁
衝撃や挙動が予測される屋外壁では、追従性のある弾性接着剤など、柔らかい接着剤が有効です。
建築外壁のコンクリート下地では、躯体の動きに追従しやすく、紫外線や水に強い「変性シリコーン樹脂」を主成分とする弾性接着剤が用いられます。
- 屋内の水がかりのない壁
接着剤の匂いが少ない、内装壁用の接着剤がお勧めです。
屋外用の接着剤を屋内に使用すると臭気が室内に残る場合がありますので、使用はお控えください。
- 水がかかる浴室壁
業務用浴室等(浴槽等、常時水没する場所を除く)、耐水性が求められる場面では、「エポキシ樹脂」の接着剤がおすすめです。
- リビング床の二重床
下地のたわみがある二重床では、接着力があり衝撃に強い「エポキシ樹脂」系の接着剤と、適度な弾性のある樹脂目地のセットがおすすめです。
- サウナや暖炉内部といった高熱状態が続く場面
接着剤にとって最大の強敵は「熱」です。
一般的に市販されている接着剤や建築用途の接着剤だと、耐熱温度は60℃程度なので、
サウナや暖炉内部といった高熱状態が続く場面では接着剤が利用できません。モルタルでの施工をおすすめします。
- 浴槽等、常時水没する場所
接着剤は常に水につかっている場所では、接着力が保てません。そのような場所ではモルタルでの施工をおすすめします。
接着剤張りをキレイに仕上げるためのコツは?
- 目地詰めしない場合
・タイル間の隙間から接着剤が見えても、デザインに影響しないような接着剤色を選びましょう。
・裏ネット製品は、裏ネット色と同系色の接着剤を使えば、裏ネットが目立ちません。
・接着剤はクシ目を立てず、平面に仕上げてから貼り付けるとタイル間の隙間から接着剤が見えても綺麗です。
- ガラス製モザイク
・ガラスの種類や、裏面の状況によっては接着剤の色が表面に透けて見える場合があります。
・クシ目を立てたまま接着剤を貼り付けるとクシ目が透けて見えることがあるので、接着剤は平面に仕上げてから貼り付けましょう。
・メーカー営業や工事業者と、接着剤の色を事前に見本張りで確認しておくと安心です。
- 石材製モザイクタイル
・石材はセラミックに比べて吸水率が高いので、接着剤の成分が石材表面に染み出す恐れがあります。
・接着剤の染み出し防止のために、石材裏面にプライマー処理をするのがおすすめです。
・白系石材は接着剤の染み出しが目立ちやすくなります。染み出しが目立ちにくい石材用接着剤をご使用ください。
タイル、石材、ガラスモザイク、全ての仕上げ材に共通することですが、
接着剤張りの場合は、モルタル張りに比べて張り代が薄くなるため、下地精度がそのまま仕上り精度となります。
モルタル下地の場合、不陸が大きい場合はモルタルで不陸調整を行うことも大切です。
接着材の豆知識
普段あまり気に留めることのない、接着剤のパッケージ。
よく見ると「エマルション形」、「二液混合硬化形」、「化学反応硬化形」といった表現がされています。

これは、「それぞれの接着剤が、液状の状態からどのように固まるか」を表しているとお考えください。
接着剤は固まると固形ですが、ご存知のように、チューブから押し出した時には液状になっていますよね。

接着したい材料に接着剤を塗ったり、均一に馴染ませるために、はじめは液状になっているというわけです。
「二液混合硬化型」:主剤と硬化剤の2つの材料が混ざることで硬化が進む接着剤
「湿気硬化型」 :外気や湿気に触れることで硬化が進む接着剤
接着剤に求められることは『くっつく』ことであり、そして何より『剥がれない』ことです。
では、一度張り付いたタイルや石材が剥がれることがあるのはなぜでしょうか?
それは、接着剤にも得意、不得意があるからです。
では、接着剤の得意、不得意って一体どういうことでしょうか?

接着剤にも、それぞれ弱点があります。
その代表的なものが「衝撃や動き」「水」「熱」です。
この3つの要因が複合的に重なると、剥離が起きることがあります。
このような弱点を補うように、成分や配合の異なる接着剤が各メーカーから準備されており、
下地や施工後の環境に応じて最適な接着剤を選定することが、とても大切なのです。
接着剤選びの早見表
使用場面×下地×仕上材といった3つの条件に沿って、おすすめする接着剤の『早見表』をご用意いたしました。
ぜひ参考にしながら、接着剤選びの際にお役立てください!
早見表(※クリックするとPDFが開きます)
また、LIXILタイル建材総合カタログ『接着剤 適用箇所一覧表』もあわせてご参考いただければと思います。
さいごに
いかがでしたか?
今回の記事が、みなさまの接着剤選びに少しでもお役に立てれば幸いです。
接着剤の選定に悩んだ時にはぜひ、今回の記事や、
『早見表』『接着剤 適用箇所一覧表』を思い出してご参考にしていただければと思います。
接着剤に関する事に限らず、タイルについてのお悩みやお困りごとがございましたら、
お気軽に弊社担当営業スタッフまたはWEBサイト内の問合せフォームより、ご相談をお待ちしております。