特注タイル 施工事例紹介 Case 2 宝蔵寺 大阪御廟 2020. 07. 08

Profile: 玄子 邦治 株式会社玄子空間デザイン研究所

和歌山県に生まれる。
1975年 フランスに渡り、欧州における空間意匠を研究。
1985年 プールホール第1号店を企画後、プールバーブームの火付け役となる。
1986年 映像化店舗の提案。
1987年 玄子空間デザイン研究所を設立。アメリカに渡り全米のアクアリウム及びW・F計画の研究を経て鳥羽水族館のデザインを手掛ける。
1989年 EXPO ’90にてパビリオン、フロートデザインなどを設計
1990年 天保山マーケットプレイスサイレンを企画設計。同じ頃台湾台北市にキリングルメ・ドラゴンドリームを設計。
その後も数々の商業施設の設計・デザインに従事。キャバクラ業態の生みの親でもある。
うどん屋つるとんたん、ホテルチャペルココナッツなどが代表作。
近年では名古屋万博、上海万博国際フードコート等の公共事業にも従事、
温浴ビジネスの再生に意欲を燃やし、家族湯を全国に広めるプロジェクトを展開、熊本市星の湯、
一休などが注目されている。
2013年 大阪狭山市に新形態の温浴施設、虹の湯をオープンさせ、メディアでも複数取り上げられた。

Profile: 玄子 邦治 株式会社玄子空間デザイン研究所

今回ご紹介する大阪の「宝蔵寺 大阪御廟」では、弊社の「シジン(四神)」シリーズをスケールアップした特別寸法で制作しました。

実際に設計された玄子邦治さんにお話を伺い、建物のコンセプトからダイナワンで特注オーダーいただいた経緯と感想、更にタイルの魅力についても語っていただきました。

和とモダンの融合

2020年4月にオープンした同施設は、御堂筋沿線初となる都心の墓地。
お寺を「日常に近い」ものだと感じてもらうため、駅近でアクセスの良い場所に建てられました。
故人のやすらぎと供養する人の快適さを大切にし、モダンな空間でありながら、その根底に息づく和の美意識である侘び寂び」の心が感じられるように設計されています。

6F本堂の様子

建物の顔・正面玄関に、DINAONEタイルを使用しようと思った理由とは

建物の顔となる正面ファサード(外壁)に 当て込む材料を選定するに当たって、建物への光の当たり方を特に重視し、 朝・昼・晩と移り変わる光が陰影になるだけでなく、アッパーライトにも耐えられる凹凸感・立体感が出せる壁材を望まれました。
更に、風化したら面白く、より「素材感」が伝わるマテリアルとして、ダイナワンの「シジン(四神)」タイルを選ばれました。色は、 お墓のイメージから、「黒っぽい」「ベーシックな」色を選定されたそうです。

アッパーライトで照らされた様子

理想のタイルを焼成するため多治見へ

今回選ばれた「シジン(四神)」シリーズのタイルは、長さ240㎜のインテリア向けのレンガタイルでした。(画像参照)
玄子さんからのオーダーは、遠景においても陰影やスケール感を失うことのない360㎜の長さと、4形状によるデザイン張りの特注オーダーでした。

右が四神シリーズ標準品、左が今回制作した特注品の四神タイル

焼き物であるタイルは、成形した状態から1260℃の窯で焼成すると凡そ10%収縮します。その際の収縮度合いの差が寸法誤差となり、形状の歪みに現れます。寸法が大きくなればなるほど大きな誤差となります

今回のグリット張りにおいては、目地通り等の仕上がりを美しく見せる為には異なる4つの形状の寸法を安定的に整える必要がありました。
タイル寸法が従来の1.5倍となっても、寸法誤差の許容差が1.5倍となるものではなく、むしろ厳しい精度管理が求められました。

今回のタイルを焼いた窯は、日本でも最大クラスの窯で焼成場所によっても焼けの度合いは異なり寸法誤差に繋がる為、窯の中でも温度の上昇と冷却が緩やかになる焼位置を、ダイナワン企画部担当者と協力工場でやり取りを繰り返し、何度も試行錯誤し最適な条件を探り出していきました。

今回の焼成に使用した窯の様子

窯出し後の仮並べで、違和感のない仕上がりが確認できた際は、工場のスタッフ一同並びにダイナワン企画部担当者共に、胸をなでおろした事を鮮明に覚えています。

4形状に対し安定的な寸法精度を模索する一方で、タイル割付により寸法誤差を上手に緩和する工夫もなされています。
複数の幅のタイルで構成される、縦×横 360㎜(目地共365㎜)の正方形を一つのグリッドとし、
360㎜角の正方形の中のタイル間の目地は約3㎜程度の細目地で調整しています。
その一方、美観を維持するため、グリット部の目地は5㎜の設定とし、タイル間目地で調整できなかったタイルの寸法バラツキを吸収し、グリッド目地を美しく通すことをタイル張りの約束事としています。

成形時の様子

最終的には、 上記の施工ルールに沿って、タイルの寸法誤差を臨機応変に目地調整しながら美しく仕上げて頂いたタイル職人に感謝しています。

タイルの魅力と可能性

タイルは、最も「あたたかみ」を感じる素材だとおっしゃる玄子さん。

その中でも国産タイルの魅力は、窯から出てきたものが、輸入材のようなデジタルプリントによる安定的なものではなく、80点の出来、120点の出来のように、想定以上のことが起きる可能性を秘めていることだそう。
今回の出来栄えも、設計時に期待していた効果を得ることができたと満足していただけました。

また特注タイルのように長いスパンで製作する商品は、時間がかかったということが人の気持ちを惹く。その意味でも今回特注タイルにして良かったそうです。

タイルメーカーとしてのダイナワンに期待していることとしては、従来あるタイルの既成概念を壊し、発想を覆すような商品の開発に挑戦する挑戦心」を大事にすること。
それは通常の標準品でも今回のような特注品でもそうで、
「売れるモノ」を探して売るのではなく、自分たちが「これを売りたい」という商品を売ることで、自分たちがトレンドを作り出し時代を引っ張っていく存在であって欲しいし、玄子さんご自身もそうでありたいとおっしゃっていました。
特に今回も、標準品よりはるかに大きく、寸法を安定させるのが大変な商品に挑戦させていただき、成果として残せたことは、ダイナワン担当者と協力工場の実力を証明することができたと思います。
オンリーワン」を目指している弊社にとってとてもありがたいお言葉をいただけました。

ダイナワンでは、お客様のご要望に応じて、焼き物、施工ノウハウに精通した専門スタッフが、営業と共に、最適な工場選定から試作まで、お手伝いさせていただく仕組みがあります。
タイルに限らず、レンガ、瓦、食器等、独自の焼き物ネットワークを駆使し、設計者だけでなく製造者の困り事を解決し、ご要望を実現してまいりますので、当社営業へ皆様のご要望をお届けください。

担当者より一言


私共ダイナワンにとっても、またタイル製造いただいた立風製陶にとっても、かつて無い湿式長尺タイルへの挑戦は、普段では得難いスタディの機会となり、大きな財産となりました。
このようなチャンスをいただき、本プロジェクトの一員として参画させていただいたことに改めて感謝申し上げます。

宝蔵寺 大阪御廟とは

2020年4月オープンの、御堂筋沿線初となる堂内墓地。少子化が著しい現代の供養ニーズに対し、便利でアクセスしやすい都心で気軽にお参りができる環境を提供する。

最上階6階の本堂の壁には、玄子さんが自ら描いた龍の絵も飾られている。

大阪メトロ御堂筋線「西中島南方」駅から徒歩3分

【住所】大阪府大阪市淀川区西中島2-6【TEL】0120-140-846

ダイナワンでは、 独自のネットワークによる協力工場や窯元と共に、ご希望の色や質感、形状に合わせた特注タイルをご提案いたします。

特注タイルのオーダー方法はこちらよりご覧ください。

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