じつは『タイルの目地幅』って、こうやって決めています 2025. 06. 19

「タイルによって、なんで目地幅が違うのかな?」 「もっと目地幅を細くしたいけど、ダメなのかな?」
など、みなさまはこんな疑問をお持ちではありませんか?
今回は『目地幅』にポイントを絞ってご紹介したいと思います。

壁タイルイメージ

「乾燥収縮」「焼き締まる」なんて言葉を耳にしたことはありませんか?
タイルやレンガなどの焼きものは、生地を乾燥・焼成させる工程で、大きなもので11〜13%くらいサイズが縮みます。

このようにタイルは収縮するため、焼成後の寸法精度に個体差が生まれます。
きれいな目地通りを実現するには、適切な目地幅を設定することが重要です。

この記事を最後までお読みいただければ、目地幅を通してタイルという素材の特性が深く理解できます。
それでは、実際の商品を例にタイルの目地幅について見ていきましょう。


▼ 目次

【1】大判床タイルの目地幅について

床タイルには、石材のような高級感とシャープさを演出したい場合に適している「レクティファイ商品」と、
焼き物の風合いやクラフト感を演出したい場合に適している「ノンレクティファイ商品」があります。
この2つの商品の例を挙げて、推奨目地幅について解説していきます。

◆推奨目地幅『3mm以上』=レクティファイ商品

レクティファイ商品は大形の輸入タイルならではの仕上げが施された商品です。
タイルを焼き上げた後、4辺を削って設計寸法に整える加工を「レクティファイド」 といいます。
タイルの側面をよく見ると削った痕が薄っすらと確認できます。
焼成後に寸法精度を高める仕上げを行うことで、3mm程度の細目地で施工することを可能にしています。

レクティファイ商品のタイル側面
レクティファイ商品のタイル側面

■推奨目地幅『3mm以上』の商品

BOOST MINERAL(ブーストミネラル)
古代ローマ時代から研ぎ石にも使われてきたベルギーのアルデンヌストーンがモチーフ。
細目地により、リアルな石張りの雰囲気を可能にしました。

BOOST MINERAL(ブーストミネラル)ターマック
BOOST MINERAL(ブーストミネラル)ターマック

◆推奨目地幅『5mm~10mm以上』=ノンレクティファイ商品

ノンレクティファイ商品はタイルを焼き上げたままが仕上がりの状態となります。
焼き物の風合いが感じられる一方で、焼き上げる過程での収縮の影響がそのままタイル寸法に反映されます。
目地通り良くきれいに張るためには、タイル寸法のバラツキに応じた広めの目地幅が必要です。

ノンレクティファイ商品のタイル側面
ノンレクティファイ商品のタイル側面

■推奨目地幅『5mm以上』の商品

OLD COTTO(オールド コット)
オールドコットは使い込まれたテラコッタ風のタイル。
テラコッタの使い込まれた風合いを表現するために、エッジ部分は丸みを帯びています。

OLD COTTO(オールドコット)ロッソ -イル カルディナーレ 銀座コリドー店 クッチーナ イタリアーナ
OLD COTTO(オールドコット)ロッソ -イル カルディナーレ 銀座コリドー店 クッチーナ イタリアーナ

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【2】壁タイルの目地幅について

壁タイルにはたくさんのデザインがあり、材質や面状、サイズも様々です。
個性的な製品の魅力が一番活きるように目地幅を決めるのがポイントです。

一般的に壁タイルは、寸法精度が比較的高くシャープな印象の「乾式製法」と、
寸法精度に大きなバラつきを持ち焼き物の風合いが魅力的な「湿式製法」に分けられます。
ここでは、2つの製法を例に挙げて、推奨目地幅について解説します。

◆推奨目地幅『2mm以上』=乾式製法・空目地

乾式製法は湿式製法に比べ生地の含水率が低く、乾燥させた原料を高圧でプレスして成形するため、収縮率が低く、寸法精度が高い特長があります。
タイルの凹凸や陰影を際立たせる「空目地」仕上げにも適しているため、目地幅を2mm以上に設定する製品もあります。

■推奨目地幅『2mm以上』の商品

FORMAT(フォーマット)
3種類の長方形と2種類の厚みによってリズム感と陰影を演出したスクエアコンビネーション。
目地材を入れない空目地仕上げと細い目地幅で商品デザインを際立たせています。
3種類のタイルをウマ踏みで組み合わせ、目地通りを意識させないデザインにすることで、細目地を可能としています。

RIBLADE(リブレイド)
刀のような極細の割肌面が繊細な印象を与える形状。
上下に連続する極細の割肌面との間に広いスペースを設けた製品デザインとしています。
このスペースが目地同様の役割を果たし、製品の反りが目立たず、多少の目地通りのバラツキが許容されています。
また空目地とすることで、より立体感(奥行き)を際立たせることにも繋がっています。

RIBLADE(リブレイド)
RIBLADE(リブレイド)

◆推奨目地幅『5mm以上』=乾式製法・目地アリ

同じ乾式製法でも目地詰めを行う場合は、目地が綺麗に通っていることが重要です。
そのため比較的寸法精度の高い乾式製法の壁タイルでも、目地幅を5mm以上に設定することが一般的です。

■推奨目地幅『5mm以上』の商品

COLORS(カラーズ)
ノンレクティファイの商品としては、長辺が450mmと極めて長く、反りの影響を受けやすい商品ですが、
ハンドメイド調のタンブルエッジの様なラフなデザインであることから、目地幅を5mm以上で設定しました。

COLORS(カラーズ)アクアマリン
COLORS(カラーズ)アクアマリン

同じ乾式製法で目地詰めを行う【ARCAICO BORDER(アルカイコボーダー)】は、
エッジの立ったシャープな意匠性をより引き出すため、5mm目地とはせずに目地幅を3mmに設定しました。
このように、タイルの寸法精度だけではなくタイルの魅力を引き出すために、目地通りよりタイルのデザイン性を重視して目地幅を設定する場合があります。

ARCAICO BORDER(アルカイコボーダー)
ARCAICO BORDER(アルカイコボーダー) - つえたて温泉ひぜんや 八百万ダイニング

◆推奨目地幅『8mm~10mm以上』=湿式製法・目地アリ

湿式製法は、水分を多く含んだ粘土を押し出して成形します。
この製法は焼成時に収縮が生じやすく、寸法精度が乾式製法に比べて劣るので、目地幅は広めに設定することが一般的です。

■推奨目地幅『8mm以上』の商品

GRAVEL(グラベル)
18mmのタイル厚による重厚感と、愛らしいグラベル(小石・砂利)の組み合わせの湿式タイル。
推奨目地幅を8mm以上に設定することで、多少の目地通りの甘さがよりクラフト感を醸し出す要素になります。
目地材の質感にもこだわりたくなる商品です。

GRAVEL(グラベル)
GRAVEL(グラベル)

■推奨目地幅『10mm以上』の商品

NOVE(ノーヴェ)
ムリなくつくり、ムダなく使い切るをテーマとし、必要な強度と意匠性を維持しながらタイル厚9mmを実現した新世代長尺ブリックです。
湿式成形ならではの寸法バラつき、反りを考慮して広めの目地幅を設定しました。
グラベルとは異なりシンプルなデザインのため、綺麗な目地通りを重視し、推奨目地幅を10mm以上としました。

NOVE(ノーヴェ)ブラック
NOVE(ノーヴェ)ブラック

【3】石材商品の目地幅について

天然石や人造石は焼成による収縮がなく切断による成形のため、タイルに比べて寸法精度が高く、目地幅が狭く設定できます。

■推奨目地幅『2mm以上』の商品

BREAKS(ブレイクス)
砕いた石材をセメントと混ぜて固め研磨した人造石の端材を組合せたテラゾースティック。
切断仕上げの製品のため寸法精度が高く、目地幅2mm以上の設定としています。細目地により人造石のシャープさやソリッド感を際立たせます。

BREAKS(ブレイクス)ミント
BREAKS(ブレイクス)ミント

【4】目地幅の違いによるデザインの変化

さいごに、目地幅によって印象が大きく変わる例をご紹介します。
こちらのNOVE(ノーヴェ)の写真は、左から目地幅が『3mm(空目地)』、『8mm』、『15mm(※水平目地のみ15mm)』です。
同じ商品でも、目地幅や目地材が変わるだけで、ずいぶん印象が変わることが分かるかと思います。

目地幅『3mm(空目地)

目地幅3mm(空目地)

目地幅『8mm

目地幅10mm

目地幅『15mm(水平目地のみ)

目地幅15mm

まとめ

ここまで来るとみなさまお分かりのように、目地には「タイル寸法のバラつきを吸収し、タイル張りを美しく見せる」という大切な役割があります。
もちろん、目地幅0でタイル同士をくっつけてしまったり、推奨目地幅より極端に細い目地幅にすれば、カッコよく見えると思うかもしれません。
ですが、「タイルの製造方法」や「製品特性」を知らずに目地幅を決めてしまって、仕上りが想像と違うと残念ですよね。
反対に、製造方法や特性を知っていることで、推奨目地幅より目地を細くしたり、目地幅や目地材・目地深さをちょっと工夫することができて、
タイルが別物のように見えることだってあります。

実際の現場で目地幅について悩まれている方々に、今回の記事が少しでもお役に立てば幸いです。
目地のことに限らず、タイルに関するお悩み・お困りごとがございましたら、
お気軽に担当の営業スタッフまたは WEBサイト内の問合せフォーム よりご相談ください。

また、過去の記事では『目地材の選定方法』についてもご紹介しております。ぜひ、今回の記事とあわせて参考にしていただければと思います。

  ▼適切な目地材をパッと素早く効率的に見つける方法
 

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