大型タイルの内装壁施工|タイル落下防止・剥落防止工法の選び方 2025. 10. 23

近年、魅力的な大型タイルが増え、「床だけでなく壁にも同じタイルを張り上げたい」「壁面はもっと大きなタイルを使い、シームレスに仕上げたい」といった
ご要望を多くいただくようになりました。

タイルの大型化・薄型化が進む中で、タイルの選定だけでなく、「いかに安全にタイルを張るか」について頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、地震の多い日本において、大型タイルを安心・安全に施工するための工法をご紹介します。

【目次】

工法選びのポイントとは?

内装壁では下地(ボード下地・RC下地)を問わず、接着剤でタイルを張ることが一般的です。

弾性接着剤をビード状に塗布
弾性接着剤をビード状に塗布。しっかりと下地に揉みこむことでタイルを張り付ける。タイル厚+(2~5)㎜程度の仕上げ厚となる。
施工概要図・断面図

弾性接着剤張りは、モルタル施工に比べて挙動追従性に優れ、施工のバラツキが少なく、安定的な接着性能が期待できる施工法です。
しかし、張り付け材が正しく機能しない万が一の場面に備え、フェールセーフ(※1)の考えを取り入れた金物併用工法を採用することで、
より大きな安心感を得ることが可能です。

工法選びのポイントは主に2つ。
「タイルの厚み」と「脱落防止金物の点数」です。それでは、1つ目のポイントから詳しく見ていきましょう。

(※1)フェールセーフ・・・問題や故障が起きても、人命に関わる大きな事故にならないよう、安全を守るしくみ

Point 1.タイルの厚みに合わせた工法選び

■ 8.5mm以上の厚さのタイルには

脱落防止金物をタイルに仕込むため、工法ごとにタイル裏面に孔加工が必要です。

10mm程度の厚みを持つ材料であれば、タイル裏面に丸孔をあけ、コイル状に巻いたステンレス金物(巻きバネ)を埋設する「Sフック工法」が有効です。
金物を埋設するための孔の深さが必要なため、タイルの厚みも8.5mm以上の材料を選択します。
タイル裏面に取り付けられたステンレス金物の先端を下地(スタッドや間柱)にビスで固定します。
環境の厳しい外壁でも使用され、30年以上の実績を持つ工法です。

タイル表面からのSフック金物と留付用ビスの様子
タイル表面からのSフック金物と留付用ビスの様子
タイル裏面からのSフック金物(LIXIL製)
タイル裏面からのSフック金物(LIXIL製)

■ 8.5mm未満の厚さのタイルには

一方で、近年登場した孔の深さを確保できない薄型のタイルには、浅めの孔で取り付けが可能な「リベット工法」が有効です。
工場で下穴をあけ、リベット式の脱落防止金物を取り付けます。
こちらの工法も「Sフック工法」同様に、タイル裏面に取り付けられたステンレスプレートを下地(スタッドや間柱)にビス固定し完了です。

タイル表面からのリベット金物と留付用ビスの様子
タイル表面からのリベット金物と留付用ビスの様子
タイル裏面からのリベット金物(オリオンセラミック製)
タイル裏面からのリベット金物(オリオンセラミック製)

Point 2.必要な金物の点数

■ 何箇所取り付ける必要があるか?

Sフック金物は金具1か所あたり約30kg、リベット金物では約80kgのせん断力(※2)を有するため、
万が一、接着剤が機能しなかった場合でも、タイルの自重を支えるには十分の強度を保持しています。

金物の点数は、金物の費用のみならず、施工手間にも影響します。
また、安全率の見方によって点数を増やす場合もあり、事前に綿密な打合せが必要となります。

(※2)せん断力・・・物体をある断面で平行にずらすように作用する力

■ 【Sフック工法】タイルサイズと金物取付推奨点数 ※タイル厚みが10mmの場合

タイルサイズ 鉛直荷重(※3) 金物点数
300×600 約4.2kg 1点
600×600 約8.4kg 2点
600×1200 約16.8kg 2点

■ 【リベット工法】タイルサイズと金物取付推奨点数 ※タイル厚みが6.5mmの場合

タイルサイズ 鉛直荷重(※3) 金物点数
300×600 約2.7kg 1点
600×600 約5.4kg 1点
600×1200 約10.8kg 1点

※上記の取付推奨点数は、試験データに対し2倍の安全率での理論値となります。現場毎に専門工事業者、元請業者様と打合せの上、取付点数を決定ください。

(※3)鉛直荷重・・・建物の重力と同じ方向、上から下へ向かって作用する荷重

■ 適用下地とビス留めの重要性

タイル裏面の脱落防止金物が機能しても、下地への留め付け用ビスが抜けてしまうと、意味がありません。
両工法の脱落防止金物は、先端をしっかりとビスで躯体、またはスタッド、柱に向けてビス打ちで留め付けます。

※タイル裏面の金物の取付位置によっては、スタッド、柱の位置にビスが届かない場合があります。
その場合、脱落防止金物に「なましステンレス線」を緊結し、ビス打ちできるようにします。

Point 3.適用下地の確認

固定用のビスの引抜強度が期待できるコンクリート躯体の場合は心配ありませんが、
ボード下地の場合は、ボード裏面のC型鋼や間柱に所定のビスで留め付けることが重要です。施工者は柱の位置を認識しておく事が必要となります。

適用下地(屋内)
● コンクリート下地
● ボード下地(合板、石膏ボード、ケイカル板 等)


いかがでしたでしょうか?
今回、ご紹介した2つの施工法は、乾式工法と見なされ、国土交通省の定期報告制度における、外壁タイル全面打診調査の対象外の工法でもあります。
大判タイル採用を検討される際は、ぜひ今回の記事を参考にしていただき、安心・安全な工法採用に努めていただけますようお願いいたします。

今回の記事でご紹介した内容に限らず、タイルに関するご質問やお困りごとがございましたら、
お気軽に担当の営業スタッフまたは WEBサイト内の問合せフォーム よりご相談ください。

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