タイルの滑りについて 2023. 01. 26

雨に濡れたエントランス、石鹼カスが残った大浴場など、思いがけないところで滑って怖い思いをしたことはありませんか?
滑るだけではなく、転倒してケガをしてしまっては大変です。
そのようなことにならないように今回は「タイルの滑りについて」分かりやすくご説明したいと思います。
<目次>
1.そもそも、なぜ滑るのか?
2.屋外に適した床タイルを選ぶには
3.C.S.R値の測定条件は一つではない!
4.浴室や大浴場に適した床タイル選ぶには
5.床材を選ぶ時に気をつけるポイントは?
1.そもそも、なぜ滑るのか?
滑りには「床材」「表面介在物」「履物」の3つの要素が関係していると考えられています。

床材
床タイルにはたくさんの面状があります。平滑で光沢のある「磨き面状」、光沢のない「マット面状」、ザラザラした「GRIP面状」などです。
特殊な物だと勾配に適した「スロープ面状」や、浴室に適した「浴室面状」などがあります。
様々な面状を持つタイルは、適した使用場面に合わせて使用しないと、滑ったり汚れの原因にもなります。
表面介在物
屋外では雨水、飲食店の厨房では油、大浴場では水垢・石鹼カスや温泉成分など、場所によってタイル表面に付着する介在物は様々です。
床タイルと履物の間に介在物が入り込み、床タイルと履物間の摩擦力が減ることによって滑りやすくなります。
履物
屋外では革靴やスニーカー、自宅ではスリッパ、浴室では素足など場所によって履物が変わります。
普段スニーカーを履いている人が革靴を履くと、普段より滑りやすく感じることがあります。
それは革靴の硬いレーザーソールが、スニーカーの柔らかい合成ゴムやビニール底の靴底よりも、摩擦力が少ないことが原因として考えられます。
このように履物と滑りには密接な関わりがあります。
その他
この3つの要素以外にも、身体的な要素が加わることもあります。
例えば年齢を重ねたことによる身体機能の低下や、病気の影響により身体機能が弱ることなどです。
利用者の特性を考えて床材を選ぶことも実は大変重要です。
2.屋外に適した床タイルを選ぶには
多くの方々は、滑りにくいタイルを選ぶ際に、メーカーのピクト表示や「滑り抵抗値」を参考にして、商品を選定されているかと思います。
私たちDINAONEでも、「滑り抵抗値」に基づいて床タイルの安全性を評価し、カタログの表示に反映させています。
雨があたる外構等、雨水の影響を受ける場面では、【外床〇】の表示がある商品を選択することが基本となります。

「滑り抵抗値」について知ろう!
LIXILグループでは、滑りに対する安全性を評価するために、数多くのサンプリングによる官能試験を実施し、
滑り試験機で測定した数値と、実際に人が感じ取る感覚との相関について研究を重ねてきました。
人の感覚を「非常に危険である」から「非常に安全である」の7段階に分け、
機械が測定する「すべり抵抗係数(C.S.R)」をプロットさせていくと、下図のような曲線となることが確認されました。
高い数値の方が安全ですが、数値が高すぎると歩行時につっかかりが生じ、体が前のめりになってしまい危険を感じることがあります。

すべりの指標「すべり抵抗係数(C.S.R)」とは?
「すべり抵抗係数(C.S.R)」は、床材と滑り片との摩擦抵抗を数値化したもので、
人間が感じる「すべりやすさ」、「すべりにくさ」と近しい対応を示すことが学術的に証明されています。
滑りを正しく測定するには、足裏、履物底にかたさや大きさ、形状、床に加わる荷重の大きさ、速さ、方向などを、
人間の動作時と近似するように適切に設定しなければなりません。
O-Y・PSM(東工大式すべり試験機)はこの様なことを十分吟味して開発された試験機で、人間のすべり感覚と合致することが証明されています。

出典:株式会社LIXIL「すべり」の科学
人間の歩行を前提としたすべり評価を行なうために、このO-Y・PSM(東工大式すべり試験機)をLIXILグループでは導入しています。
上記の図のように、すべり片に鉛直荷重をかけて斜め上方に引っ張り、すべり始めた時の引っ張り力を鉛直荷重で除して、すべり抵抗係数を得ます。
3.C.S.R値の測定条件は一つではない!
続いて、普段何気なく使用されることの多い「滑り抵抗値(C.S.R値)」ですが、誤解され使用されているケースが多くみられます。
ここではCSR値の測定方法について、一歩踏み込んでご紹介していきます。
JIS A1509-12 2020では、外床タイルについて、2つの試験条件が例示されています。
【JISで例示された2種の滑りの測定条件】

このように、測定条件が複数あるため、滑り抵抗係数からタイルを選択する際には、試験条件を正しく把握する必要があります。
一体、どの条件を使用したら良いの?
■使用場面を広くカバーできる条件と基準値を設定
タイル表面に付着する水や汚れなどの、表面介在物のすべてに対応している床タイルが理想ですが、現実的ではありません。
そうした中でDINAONEでは、一般に屋外に床タイルが使われる場面では、タイル表面に泥水がある場合と、雨水がある場合の
2条件で測定したC.S.Rを満たせば、大方の使用場面を広くカバーできると考えました。
都市部において、雨天の際、雨水が介在物としてタイルに付着する場面(JIS A1509における滑り条件1)、
また都心部を離れた郊外等、雨水に土汚れが持ち込まれ、泥水が介在物としてタイルに付着する場面(同滑り条件2)を想定したわけです。

理想的にはできるだけ多くの条件で必要な基準を満たすことです。多くの条件(介在物)とは、泥、水、油、洗剤などがあります。

あらゆる条件が考えられる中、タイルJISでは屋外床の実場面でよく見られるものを優先し、稀な条件を外して選定・例示しています。

雨水と泥水の2条件を満たせば、大方の場面で安心と考えています。
出典:株式会社LIXIL「すべり」の科学
泥水条件でC.S.Rの高いものを選んでも、雨水条件では危険な商品があります。逆に雨水条件だけで選んでも泥水条件で危険な商品もあります。
したがって、両方の条件での測定においてある一定水準を満たすことが重要です。

■基準値と合否について
JIS A 5209では、滑り抵抗値の測定条件の例示はあるものの、合否の基準値は規定されておらず、
私たちDINAONEでは、滑り試験機による測定値と、これまでの知見や過去の滑り事象から社内基準値を設定しています。
滑り条件1については、基準値【0.55以上】を定めています。
滑り条件2については、【0.40以上】を社内基準としています。
合否の判定は、滑り条件1、2の2条件での基準値をいずれも満たすこととしています。
条件名 | 基準値 |
---|---|
滑り条件1 | 0.55 以上 |
滑り条件2 | 0.40 以上 |
4.浴室や大浴場に適した床タイル選ぶには
雨が降り、表面が濡れた外部の床と同じように、水濡れ状態が懸念される場所として、浴室やプールが考えられます。
履物を歩行する外部床の滑り抵抗値を「C.S.R値」が適用されるのと同時に、素足歩行する浴室については「C.S.R・B値」が適用されます。
DINAONEでは、素足を想定する浴室ではすべり抵抗係数(C.S.R・B)が高ければ高いほど安全性が高いと評価しています。
また、素足歩行場面を「浴室・大浴場・プールサイド」の3段階にわけて、すべり抵抗係数(C.S.R・B)の基準値を設定しており、
その数値をクリアし、かつ独自に設定した素足歩行用基準に合った商品をお勧めしています。
使用部位 | 基準値 |
---|---|
浴室床 | 0.74 以上 |
大浴場床 | 0.83 以上 |
プールサイド床 | 0.96 以上 |
〈測定条件〉…C.S.R・B(JIS A5209より)
5.床材を選ぶ時に気をつけるポイントは?
①利用場面に応じた測定(試験)条件でのデータから判断すること
タイルが使用される環境は一様ではありません。
メーカー側が持つ試験結果についても、どのような試験条件での測定値かを理解しておくことも大切です。
②実場面・実物タイルで防滑性を確認すること
滑り抵抗値による判断に加え、生産ロットによる滑り抵抗値のバラつきも考慮し、実物タイルサンプルで防滑性を確かめて、
採用を検討することをお勧めします。
おわりに
今回は「タイルの滑り」についてご紹介させていただきましたが、いかがでしたか?
DINAONEのスペシャルコンテンツでは、設計者やデザイナーの皆さまのお仕事に役立てていただけるよう、
タイルに関する記事を掲載しております。ぜひ今回の記事とあわせてご覧ください。
また、「滑り」のことに限らずタイルに関するお悩み・お困りごとがございましたら、
お気軽に担当の営業スタッフまたは WEBサイト内の問合せフォーム よりご相談ください。お待ちしております!