大判タイルを採用する前に確認しておきたい6つのこと|600×1200㎜角タイルの魅力 2025. 02. 20
ほんの数年前までは、大判タイルといえば600㎜角という風に、600㎜角タイルは大きなサイズとして認識されていました。
ヨーロッパを始め、世界各国のタイル製造技術の向上により、今では600㎜角は決して大きなサイズとは認識されず、
600×1200㎜角(0.72㎡/枚)、900㎜角(0.81㎡/枚)、1200㎜角(1.44㎡/枚)といったタイルが続々と登場しています。
600×1200㎜角は商業施設や大型ホテルなどの採用にとどまらず、集合住宅や戸建て住宅に採用を検討する設計士やインテリアデザイナーが増えてきました。
しかし、初めて600×1200㎜角などの大判タイルを採用するとなると、色々な心配ごとが頭をよぎります。
「下地は何にすればいいのか?」
「金物を使わないで接着剤だけで施工して問題ないのか?」
「割れやすいのではないか?」
今回の記事では、設計者やインテリアデザイナーの方から寄せられる疑問や心配ごとをもとに記事を構成しました。
最後までお読みいただければ、安心して600×1200㎜角などの大判タイルを採用できる知識が身に付きます。
できるだけ分かりやすく解説するように心がけましたので、ご一読ください。
【目次】
- Q1:どのくらいのサイズから大判タイルと呼ばれるのか?
- Q2:大判タイルを使うメリットは?
- Q3:大判タイルを使う場合の注意点は?
- Q4:大判タイルの床施工の注意点は?
- Q5:大判タイルの壁施工の注意点は?
- Q6:大判タイルはどんなデザインがあるのか?
- まとめ
Q1:どのくらいのサイズから大判タイルと呼ばれるのか?
そもそも大判タイルは、どの程度のサイズのことを指すのでしょうか?
じつは明確な定義はなく、時とともに変化しているのが現状です。
日本国内では一般的に300×300㎜角以上のものを指し、特に600×600㎜以上のタイルを大判タイルとされることが多いです。
一方、イタリアを中心に欧州では600×1200㎜や900×900㎜が一般的なサイズになっています。
大判タイルの種類について
近年、製造技術の進歩により大判タイルのバリエーションが増えています。
以下のように大まかに4つのカテゴリーに分類されます。
カテゴリー | サイズ | 厚み | 特徴 |
---|---|---|---|
一般的な 大判タイル |
300×600~ 600×1200㎜角 |
9~10㎜ | ・非住宅から住宅まで、屋内外、壁、床のあらゆる場面で使用される ・形状バリエーションが豊富、300×600、600×600に加え、600×1200㎜角がスタンダードサイズに仲間入り ・壁施工の剥落防止の施工方法が確立している |
Bigスラブ | 1000×3000㎜角 | 6㎜未満 | ・非住宅から住宅まで内装壁が中心に使用。軽量故にカウンターや什器の面材への需要も高い ・1000×3000㎜角など、スラブ材並みの超大型形状。天高まで1枚でシームレスな施工が可能 ・超薄型で加工性に優れ、割付にあわせ切断加工ができる |
高耐久 大判タイル |
600×600~ 600×1200㎜角 |
14~20㎜ | ・外構床や駅床などハードユースな場面で需要の中心であったが、近年、デザイン性、施工法の開発が進み、 バルコニー、デッキ等の浮き床の仕上材としても活躍 ・600×600㎜角が主な形状であったが、近年は200×1200㎜(木調)、600×1200㎜(石調)も登場 |
厚型 Bigスラブ |
1000×3000㎜角 | 12㎜以上 | ・Bigスラブの成形技術の進化により、近年ではタイル小口まで、柄がデザインされるものも登場 ・小口面の仕上げが重要となるキッチン天板、テーブル等の家具仕上げ材での需要が高まっている |
今回の記事では「一般的な大判タイル」にフォーカスして大判タイルについての解説を行います。
Q2:大判タイルを使うメリットは?
目地の少ない洗練された空間
大判タイルは目地が少ないため、広い面積に施工した際に石材のような一体感のある美しい空間を演出し、何より空間を広く見せる効果があります。
輸入タイルの多くが、四辺を切断加工で仕上げているため、3㎜程度の細目地仕上げが一般的であり、ビッグスラブ等ではシームレスな空間設計を実現します。
また、目地が少ない大判タイルは清掃性の面でも優れているので、飲食店や美容室の床材におすすめです。

設計:タカラスペースデザイン株式会社
デザインの連続性
大理石をはじめとする石材調のタイルは、ダイナミックな柄が魅力です。
600×1200㎜などの大判タイルは石柄の連続性を表現するにはもってこいのサイズです。
近年人気のパタゴニア等、ダイナミックなストーンデザインを表現するのにも適したサイズであり、年々、新たな新作が登場しています。


デザイン監修:株式会社入江三宅設計事務所

設計・施工:株式会社ラックランド
デザイン・監修:両備ホールディングス株式会社・株式会社イチミリデザイン
撮影:西平 佳史
Q3:大判タイルを使う場合の注意点は?
施工の難しさ
大判タイルは1枚が大きく重くなります。
そのため、目違いがなく綺麗に目地が通るように施工するには、高い施工技術が必要になります。
また大判タイルは、タイルの反り(凸反り)が大きくなる傾向があります。
施工時は反りによる影響を少なくするために、適切な面調整が必要になります。

下地の平滑性と求められる下地精度
タイルの仕上がり寸法はモルタル張りの場合でタイル厚+2㎜~5㎜程度のため、張り付け材の調整幅が限られています。
そのため下地の精度がそのままタイル表面の平滑性に影響します。
美しいタイル仕上げを実現するために、下地精度は±2㎜/2m以内が推奨されており、適切な下地処理や現場管理が必要となります。
Q4:大判タイルの床施工の注意点は?
大判タイルを床に施工した場合の注意点を3つ紹介します。
施工方法が知りたい方はこちらの記事をお読みください。

①空隙による割れ
600㎜角以上の大判タイルは下地が平滑でない場合は、タイルと下地の間に隙間ができやすく、そこに力が加わるとタイルの割れにつながります。
とくに車の乗り入れがある外溝床は、タイル裏面と下地の「すきま(空隙)」を減らすために300㎜角以下の小さなサイズや、
20㎜厚などの高耐久な厚みがあるタイルをおすすめします。

②水勾配への対応
外構や浴室等でタイルを使用する場合、避けられないのが、水勾配への対処です。
片勾配への施工時は、大判タイルをそのまま利用が可能ですが、すり鉢状に複数方向からの勾配がある場合、
残念ながら、タイルを斜めに切断し、小割にし納める必要があります。
石柄の強調されるものより、シンプルなデザインのタイルの方が影響が少なく無難と言えます。
③タイル仕上げ面の面調整
大判タイルは、反りが大きくなる傾向があるため目違いが出ないよう施工することが重要です。
段差がある床面は歩行時にかかとが引っかかり、スムーズな歩行の妨げになることがあります。
また外光があたるエントランス床では段差が影になり、デザインの妨げになります。
駅や空港などの交通機関や大型商業施設などの大面積の床へ大型タイルを施工する場合は、短時間で大面積を施工するため、
「トップフィット工法Ⅴ」がおすすめです。この施工法により施工時間を短縮し、美しいタイル仕上げに有効です。


Q5:大判タイルの壁施工の注意点は?
大判タイルを壁に施工した場合の注意点を3つ紹介します。
施工方法が知りたい方はこちらの記事をお読みください。

①3m以上の高い場所に施工する場合
内装、外装問わず3m以上の場所に大判タイルを施工する場合は、剥落防止のために接着剤に加えて金物を併用した施工方法を推奨しています。
万が一、接着不良や施工不具合でタイルが剥がれた場合でも、金物がタイルの剥落を防ぎます。


②外装に施工する場合の注意点
外装に光沢のあるタイルを使用する場合は、施工後のタイルの傾きに注意が必要です。
タイルの反りや下地の精度、施工の精度によりタイルの転びが大きく出る場合は、日光の反射角度の違いにより隣り合うタイルの色味が異なって見えます。
あらかじめモックアップ等で確認することをおすすめしています。

③出隅の納まり
大判タイルの多くはコバ面(タイル側面)が施釉されておらず、タイル表面のような柄が施されていません。
コバ部分が目線に入る出隅については、接着役物の使用、タイルトメ加工や見切り材できれいに納めることをおすすめします。
壁タイルの納まりについては以下の記事を参考にしてください。

Q6:大判タイルはどんなデザインがあるのか?
【ORIGIN|オリジン】
(600×1200㎜角)
トラバーチンらしいベインカットのグラフィックがトラディショナルなインテリアデザインを際立たせるORIGIN。ホワイトとグレーのニュートラルカラーに、温かみのあるサンドと落ち着いたブルーの4色を取り揃えました。
【FAVENTINA|ファヴェンティーナ】
(900×900㎜角)
イタリア中部地方の伝統的なテラコッタをモダンにアレンジしたFAVENTINA。ナチュラルカラーによる、包み込まれるような仕上げは、今後の注目です。
【UNIONSTONE|ユニオンストーン】
(600×1200㎜角、900×900㎜角)
石へのオマージュとして開発をスタートしたユニオンストーン。
ベージュのニュアンスがほのかに感じる優しい色合いのセドルグレー。グリーンや黄色の流れ模様が力強いインパクトを持つセルペンティーノ。それぞれ異なる魅力を持つストーンデザインが美的・感覚的な美しさと、包み込むような強い色調でクラシックからコンテンポラリーまで多面的な表現を可能にします。
【DRIPART|ドリップアート】
(600×1200㎜角)
金属の化学反応と時間による無限の変容プロセスを体験する
ドリップアート。その変化はあらゆる段階で観察、撮影され
最も興味深く、魔法のような瞬間を厳選したグラフィックデザイン。エナメルの光沢とサテンが織りなす繊細な効果が躍動感を際立たせます。
【BOOST STONE|ブーストストーン】
【BOOST STONE GRIP|ブーストストーングリップ】
(600×1200㎜角 他)
ライムストーンの自然な美しさを最大限に引き出したブーストストーン。都会的なインテリア、エクステリアに静かに調和します。
インドアとアウトドア、それぞれに適した2つのテクスチャ。洗練されたデザインと機能が、様々な空間シーンへの調和を可能にしました。
【MONTPELLIER|モンペリエ】
(600×1200㎜角 他)
フランス南部で採石されるクラシックライムストーン。
オリジナルは古くから建物の仕上げ材としては勿論、カウンタートップから彫刻まで幅広く使われ、その表情からは経年変化により浸食された遥かなる時の痕跡と上品で優雅な印象がうかがえます。
モンペリエシリーズはこの柔らかでやさしい表情を最新の施釉技術で見事に再現したセラミックタイルです。
【MB3|エムビースリー】
(600×1200㎜角 他)
石目模様の多彩なパターンがハイセンスな空間に溶け込む
『MB3』(MB=MONTBLANC)。
アフリカ原産のクォーツ石モンブランをオリジナルモチーフに優しく輝くベイン(流れ模様)を最先端の技術で見事に再現。
まとめ
今回の記事では大判タイルを採用する前に確認しておくべきことを解説しました。
大判タイルの特性を理解することで施工後に「こんなはずじゃなかった」という後悔が少なくなります。
タイルの基礎知識をまとめた資料はこちらにございますので、タイルに関する疑問がある場合はぜひご覧になってください。
